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私が辞めた歯科技工士という仕事。

私が辞めた歯科技工士という仕事
ここち
ここち
実は私、歯科技工士免許を持っています。

自分自身で稼いでいくために、安定した職業を求めるなかで、堅実とされるのが、手に職をつける、技術職、専門職。その中の医療関係で特殊な職業である、歯科技工士という仕事についてが今日の記事のテーマです。

記事概要

歯科技工士経験者から見た歯科技工士という仕事の実態について、個人的視点と感想を偽りなく書いています。
これから歯科技工士になりたい方、歯科技工士になったけど続けるか迷っている方、身近な大切な方が歯科技工士だけど仕事内容や環境が気になる方、免許を取ったのに辞める心理が気になる方にとって、1実例として参考になったら嬉しいです。

私が「歯科技工士」として働いたのはわずか1年弱。その後、知人の経営する歯科技工所にて、補助業務をメインに5年ほど働いたのち、
完全に歯科業界、歯科技工士という職業と決別しました。(免許は保持)

歯科業界で約6年間、業界内における、歯科技工士の立ち位置や、職業、生業として歯科技工士を続けている歯科技工士さんたちのリアルを目の当たりにしてきた私から。
私が歯科技工士を辞めた理由に説明がつくように、

歯科技工士という「職業」が、いったいどんなものなのか

解説していきます!

私が歯科業界を離れてから10年以上たちます。現在も歯科技工士を続ける友人から話を聞く限り、状況としては大きな変化はなく、むしろ、より厳しい状況になってきている様子が伝わってきています。これから歯科技工士を目指す方は、是非、今現在歯科業界に在籍している現役の方へのヒアリングがかなうよう、行動されることをおすすめします。



歯科技工士(Dental technician)の仕事とは

患者さんが失った歯を、人口材料を使って加工、復元する専門的な仕事。

製作する歯科技工物
  • 一般的な歯科の領域では入れ歯、差し歯、詰め物、矯正装置など。
  • 大学病院などでは顔貌修復など、歯以外の組織を修復する分野も。

歯科技工士は国家資格です

歯科技工士として仕事をするには国家資格=免許が必須で、免許取得のための国家試験を受験するためには、専門学校で必修単位を取得する必要があります。

ちなみに、歯科技工士として就業している人、歯科技工所の数については

1年おきに実施される厚生労働省の調査で公表されているうちの最新、平成30年の結果をみると

  • 就業歯科技工士(以下「歯科技工士」という。)は 34,468 人で、平成28年に比べ 172 人(0.5%)減少。
  • 歯科技工所は 21,004 か所で、平成28年に比べ 98 か所(0.5%)増加。

となっています。

新卒歯科技工士の就職先(求人)

A:歯科技工所=歯科技工士が経営。複数の歯科医院から仕事を受注。
B:歯科医院=院内ラボと呼ばれる、歯科医院内併設の歯科技工室内に、歯科医院専属の歯科技工士として勤務する
C:公的機関や一般企業、教育機関他=大学病院内の歯科技工室、企業内診療所の院内ラボ、教育研究機関など。

2018歯科技工士実態調査によると
A:B:Cが5:3:2(その他含む)くらいでしょうか。Cは、準公務員扱いなどもあり、安定しているため、空きがほとんどなく、募集があっても非常に狭き門。

私が歯科技工士資格を取ろうと思った理由

高校の時に進路を選ぶ段階になって、

手に職をつけたい
自分で経済力をつけたい

適正面から

自分は手先が器用

という理由です。

そして歯科技工士になった

歯科技工士への道を目指し、専門学校へ入学、無事国家試験に合格し、歯科技工士として社会人デビューを果たしました。

ここち
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私が就職したのは、歯科技工所です。

なんで辞めたのかを振り返る

学校に通って。国家試験を受験して。合格して両親には学費も出してもらって。そうまでしてやっと歯科技工士になって。辞めるって大きな決断を下したのか、決断するまでかなり時間をかけましたが、振り返りまとめてみます。

1.自分の問題:歯科技工士としてのスキル不足

渡された仕事をこなせない日々

学校で学ぶだけでは、正直、社会に出て歯科技工士として仕事をこなすだけのスキルが身に付きません。

仕事をこなす上で一番必要なスキルが「スピード」であり、就職すると、まず「スピード」が求められます。

でも、就職したての歯科技工士1年生、スピードというスキルを持ってないです。

学生時代の実習は、製作数自体も圧倒的に少なく、技術をみにつけるのが目的なので、スピードよりも正確性を重視して、じっくり取り組みますので、早く作ることについての指導もなく、就職したらスピードが必要だとの情報を私は得ないまま社会に出てしまいました。。

ここち
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同級生の中には、就職する前に、先輩へのヒアリングで、こういった業界情報を得ていた人もいたと、後に知りました

学生時代に身についていないスピードというスキルがないまま、数をこなすという、矛盾を乗り越えられるかが、メンタル的にも負担になりましたし、なにより、体力が持ちませんでした。体力もスキルに関係してくる、そんな世界でした。

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※決して、簡単に片づける意味ではありません。どの制作物も患者さんの身体の中に入り、機能を回復するための大切なものです。気の抜けない作業と技術で真剣に製作に取り組むことは同じです。

2.業界の問題:売り上げとお給料のバランスに不安

→雇われている場合のお給料の頭打ち額が低い。

なぜかな、というところ、私なりに分析しますと。

薄利多売にならざるを得ない。業界的な問題構造から抜け出せない

実際の歯科技工士の技術料が、技術への評価ではなく、計算上の予算から割り出される傾向になっているため、結果として歯科技工士の技術料が低すぎ、売り上げ確保のため数をこなすしかない、という状況が続いています。

歯科領域の特殊事情:保険と自費の区分
保険の場合の歯科技工料

特殊事情として、保険制度があります。

患者さんが歯科を受診して保険証を使って治療を受けている部分。

歯科医個々には、価格を決める権限はなく、すべて、国が決める「点数」で報酬が決まっています。これは、医療保険制度が税金を使って成り立っているから。そのため、歯科医院はその点数による報酬内で歯科技工士に支払う歯科技工料=技術料を賄うことになります。

この点数が、適当かどうかをどのように決められているのか。

歯科技工士が真実を知る術はありません。歯科技工所が取引をする歯科医院との間ではもちろん、制作物ごとの技工料を設定します。この技工料金は、現実的には保険点数を鑑み、歯科医院側の予算を重視した価格設定にすることが優先され、技術やコストに見合った取引価格の設定は、ほぼ実現できない状況となっています。受注できなければ、売り上げは0だから。

自費の場合の歯科技工料

保険が効かない「自費」となると、とたんに患者さんが支払う料金が跳ね上がるので、患者さんからはさぞかし歯科技工士が儲かっている、と思われがちです、実際のところ、どうでしょうか?

材料費も高額なため、詳細はケースによりかなり差はあると思いますが、自費の場合で歯科技工料(技術料)は患者さんが支払う金額の、超ざっくりで、だいたい1割前後です。
出来上がった制作物そのものを作るのに必要な材料の他、工程で必要になる間接的な材料、人件費、テナントを借りていたり機械をリースしていたら固定費などもかかりますので、患者さんが支払った料金から諸々の経費を差し引いて残った金額内で歯科技工料が支払われるという計算で、やはり、技術料というよりは予算優先での設定となっているのが現状です。

独立のハードルが高い:将来的に継続するハードルが高い

業界の問題点に大きく起因しますが、勤務歯科技工士が受け取るお給料の限界値、とっても低いです。取引量に左右されることなので。報酬を増やしたければ、独立することになります、が、開業コストを回収したうえで継続する厳しさを他の職業と比較したうえで判断することが大切かなと思いました。

歯科技工所開業のハードル
歯科技工所開設要件を満たす、スペースの確保

  機械、作業机などである程度のスペースが必要なほか、排気や光量の要件などを満たし保健所に届け出が必要

小規模経営なわりに高額な開業資金

機材・材料 普通にそろえる機材の他、自費の製作に必要な高額な機材。材料も、使用を見越してある程度の在庫を抱える必要があり、開業当初の運転資金も考えて、数百万必要です。

歯科技工所継続の難しさ
納期

数をこなそうとすると、納期に追われ、徹夜や徹夜に近い状態を続けることになる

新規開拓が難しい

参入は厳しいです。専門銀術のみを専門学校で学んで技術職として勤務してきた歯科技工士が、営業をこなすのは至難の業です。

先行投資が難しい

他社との差別化を図るためにも、新しい材料に対応したり、新しい技術を導入する必要性も高いのですが、新しい機械の購入費用、技術を学ぶためのセミナー費用や時間的なコストの捻出には、相当の負担と無理が必要になってきます。

人材確保

経営安定化、拡大のためと人材を獲得したくても、仕事量と売り上げ、人件費のバランスをとるのが、他業種と比べて難しいと感じます。

休めない

どの職業にも言えるとことだとは思いますが。納期が決まっていて、ギリギリの人数で回すため、休めませんでした。しかも、納期を守るためには、仕事が終わるまで絶対帰れない。

女性として、家庭と仕事の両立を考えた時に、この1点だけでも継続は難しいと判断しました。

私が歯科技工士を辞めた理由

=将来への不安>将来への希望

長時間労働、将来的な昇給幅が少なそうで経済的不安、業界の先行き不安(自分の努力で改善できない問題、大きな壁)

その後私は、プロフィールにも少し書いていますが、紆余曲折ありながらいろいろと転職、WEB業界での経験を積んで今にいたってます。

歯科技工士という仕事は、専門職なだけに、いざキャリアチェンジしようとすると、難しい側面もありますが、自分の転職ケースを振り返ると、歯科技工士という仕事をつづけたガッツがあればなんでも挑戦できる、と思えます。

もしキャリアチェンジ(全く別の職種)での転職を薄らと頭に思い浮かべている場合は、早めに情報収集して、少しずつ頭の中を整理しましょう。情報に触れると、もちろんその情報がすべてではありませんが、自分の転職先に実は沢山の選択肢があることに気づけます。可能性に気づくと、気分的に少し楽になりますので。

歯科技工所経営サイドの視点とお給料の実際

これは特に、経験の浅い新人歯科技工士にフォーカスしますが。。

会社として、複数人の歯科技工士が在籍して、経験の少ない新人の分の売り上げをベテランがカバーできる組織力がある場合は又別だとは思いますが、実際は新人を受け入れて教育するコストを負担できるだけの体力を備えた歯科技工所は。。。あるのかな。。厳しそうだなというところ。

お給料に見合う売り上げに必要なノルマ。敢えて、ノルマという言葉を使います。シビアな話なので。

経営を成り立たせるために、あたりまえの話ですが、新人に割り振られる仕事の単価が低すぎるので、その分数でこなすことが求められます。当然、こなしきれない数を割り振られます。

私が就職した当時で、就職して3カ月経過したくらいからは、1日に渡される仕事の総売り上げ金額が1万円程度。数にすると、小さい詰め物10個程度です。学生時代の実習ですと、この小さい詰め物を1つ作るのに、指導を受けながらですが10時間程度かけていました。複数個を作る際に、同時に行える工程もありますが、朝8:30から始めて、夜12時くらいまで毎日働きました。同期は全員1年で退職しました。
先輩に教えていただく時間もかなりあり、私の他新人歯科技工士のために先輩方も忙しいなか、時間を割いていただいたことには、本当に感謝しかありません。

ちなみに、当時の先輩のようすとして。主にメタルボンドという、自費の白い差し歯を製作していた歯科技工士さん、忙しいと3日ほど、会社に泊まり込んでいました。
そうすると、お給料がすごくいいのかな?と思われるのですが、歯科技工士を辞めた後一般企業でのお給料を手にした私のお給料より少し良い程度だったと思います。

退職金制度あり・歯科技工士求人・転職(グッピー)検索結果画面へのリンク。勤務地はリンク先でご自分で絞ってみてください。

【非公開求人】多数掲載/転職ならDODAエージェントサービスへのリンク。一般的な求人情報に興味がある方は一般的な転職サービスのサイトを眺めてみると参考になります。(歯科技工士以外の世界に興味がある場合)

 

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じゃぁ、私はどうすれば、辞めずに続けられたのか

実際、今でも同期で歯科技工士として仕事を続けている人もいますし、現実社会の中で、歯科技工士として活躍されている先輩、後輩、沢山いらっしゃいます。

なぜ続いているのか、続けられるのか。

というより

彼、彼女たちと私の違いってなんだったのか。

性格?根性?環境?

振り返ると
初期だけでも家族のサポートがあったら少し違ったかもしれない

実際、技術職なので、技術を身に着けるまでの修業期間、仕事をしながら指導も受けて長時間労働になる間だけでも、実家に身を置いて、仕事だけに専念できる環境だったら。。。(そんな同僚をうらやましいと感じていたことは事実です)

勤務先にもよるのかも

私が勤務したのは歯科技工所でした。歯科技工所でも、もう少し教育制度が整っている会社もあったと後に知りました。求人案件を絞る際、現役の先輩のアドバイスをもらっておけたらよかったかも。そのうえで、学生の段階で社会人になってからの長期的なビジョンを持っていたら違ったかも。

まずはアルバイトから始めても良かったかも

これは、学生の時には全く無かった視点ですが。

歯科技工物の製作工程、学んだ経験があればだれでも知ってる通り、準備工程からでも複数あって、一から全部を、職業レベルのスピードでこなせるようになるまでって、結構な時間がかかります。

最初の就職先を決めることに不安があるなら、まずはアルバイトで準備作業など補助的な業務からtryしてみるのも一つの手かもしれません。(家族と一緒に住むなど経済的に不安が少ない場合ですが)

※アルバイトをおすすめする意味ではありません。

※免許が無い人は歯科技工を行えないので、学生でアルバイトは募集があったとしても従事できる業務にかなり制限があるはずです。

気になる情報、実態調査など(参考資料コーナー)

資料へのリンクです。

実態調査的な資料

平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 (厚生労働省 歯科技工士就業人数、技工所数)

歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究(H28-医療-一般-005)国立保健医療科学院

第8回歯科技工士の養成・確保に関する検討会資料1令和元年12月12日(厚生労働省)

歯科技工所アンケート報告書掲載ページ(東京歯科保険医協会 歯科技工士問題検討委員会)

ラボ経営、就業の方向け

助成金は経営者向けの情報にはなりますが、就業中の方も、ご自身がお休みをする場合に雇用主が受けられる助成について知っておくことも大切だと思いますので、対象になりそうな方の参考に。。

介護や子育てなど、仕事と家庭の両立を支援する取り組みに対して、複数の助成金がありますので、申請の対象になるかどうかなど詳しくは下記で確認してみてください。
参照:厚生労働省

歯科技工士のあなたが使える主な緊急経済対策(ちょっと古くなりましたが参考に掲載を継続します)

令和2年度の新歯科技工士情報

歯科技工士国家試験結果 詳細
受験者数859名、合格者数823名、全体の合格率は95.8%となった。

引用:歯科医師情報サイトWHITE CROSS ニュース2021/03/26

ちなみにこのサイトにある

歯科技工料を再考する ー歯科技工士実態調査報告書からー」(2020/03/12)という記事が気になりました。。ドクターの視点での編集生地と思われるので論調が気になるのですが。。(登録しないと読めません。。)

最後に

ひとつ、歯科技工業界について私が言えること。

想像以上に厳しい世界、業界であることに、今も変わりないということ。

もしいまあなたが学生なら。学校の先生や先輩だけでなく、今はネットでも情報を集められるので、そこからぜひ実際の情報を得られるよう、悔いのない職業選びをしてほしいです!

もしいまあなたが歯科技工士を続けるか迷っているなら。歯科技工士を続ける理由を考えてください。強いモチベーションとぶれないココロでしっかり将来を見据えられるように。

もしいまあなたの大切な人が歯科技工士をしているなら、よりよい未来について一緒に考えてみてください。

私の知る歯科技工士さんは全員が、超がつくほどまじめで、熱心で自分の仕事に誇りをもって歯科技工士という仕事を続けています。

歯科技工業界に関わりを持ったことがある人間として、歯科技工士のみなさんと歯科技工業界の未来がより良いものになるように願う気持ちで書きました。

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